2022.07.26
学生の活動
前人未到の快挙!幻のイオン:テトラフェニルアンモニウムの合成に成功!
ナノ精密医学・理工学卓越大学院プログラム履修者の笹本大空さん(医薬保健学総合研究科創薬科学専攻博士後期課程3年)、藤田光助教、國嶋崇隆教授らの研究グループは、今まで合成未到だったテトラフェニルアンモニウムの合成を達成しました。本研究成果は2022年5月9日にNature Communications 誌に掲載されました。
Nature Communications 誌掲載記事はこちら
笹本さんのコメント:
今回私は、世界で初めてテトラフェニルアンモニウム(Ph4N+)の合成と構造同定に成功しました。このイオンは、有機化学の初学者であってもその化学構造をイメージできる程、非常にシンプルな構造を持っています。それにもかかわらず、これまでに化学合成されたことはなく、自然界からも見つかっていませんでした。従ってPh4N+は、存在できるのかどうかすらも明らかにされていない、正に幻のイオンであったと言えます。このような挑戦的な課題に取り組み、いくつもの壁にぶつかりながらも遂にPh4N+の合成を達成したときの喜びは今でも鮮明に覚えています。また、論文の掲載と同時に様々なメディアで本成果を取り上げていただきました。自分の取り組んできた研究に対して多くの人に関心を持ってもらえたことは非常にうれしく思います。
國嶋教授のコメント:
笹本さんは何事に対しても貪欲に追求できる学生です。Ph4N+の合成難易度は極めて高く、合成戦略の設計、反応条件検討、単離精製、構造解析のいずれの過程にも特有の難しさがありました。それでも笹本さんはひたむきに本研究へ取り組み、見事に合成を達成してくれました。今回の研究成果によりPh4N+の高い安定性が実証されたため、今後このイオンの類縁体合成や物理化学的性質の解明が進めば、新たな有機カチオンとして幅広い分野で活用されると考えられます。本年度は笹本さんにとって博士後期課程の最終年度となりますが、持ち前の体力と貪欲さでさらなる発見をしてくれることを期待しています。
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