2025.03.10
学生の活動
世界初!完全原子的平坦ダイヤモンド表面をMOS 界面に用いたダイヤモンド MOSFET の作製に成功
ナノ精密医学・理工学卓越大学院プログラム履修者の小林和樹さん(大学院自然科学研究科電子情報科学専攻博士後期課程3年)、ナノマテリアル研究所の德田規夫教授らの研究グループは、産業技術総合研究所先進パワーエレクトロニクス研究センターの牧野俊晴研究チーム長、ドイツ Diamond and Carbon Applications のクリストフ E. ネーベル CEO(本学招へい教授)との共同研究により、世界で初めて完全に平坦なダイヤモンド表面をMOS界面に有するダイヤモンドMOSFETの作製に成功しました。
次世代パワーデバイスとして期待されるダイヤモンド半導体は、優れた物理特性を有し、将来的にはシリコンや化合物半導体であるSiC、GaNを超える高性能デバイスの実現が期待されています。しかし、従来のダイヤモンドMOSFETは、MOS界面におけるチャネルの散乱因子が多く、動作時の高い抵抗が課題でした。本研究グループは、MOS界面の原子レベルの凹凸が散乱因子の原因の一つであることを解明し、2022年に開発した完全平坦表面を持つダイヤモンド半導体層の選択的埋込成長技術を用いることで、MOS界面の低抵抗化を実現しました。
作製したMOSFETは、ノーマリーオフ動作を有し、従来のMOSFETと比較してドレイン電流密度が12.5倍向上しました。さらに、本技術を用いることで、ダイヤモンドMOS界面の電子移動度を従来の2倍以上向上させることにも成功しました。これにより、低損失かつ高耐圧の次世代パワーデバイスの開発が加速されると期待されます。また、ダイヤモンドMOSFETの低消費電力化に貢献し、電気自動車(EV)や再生可能エネルギー分野における革新的な技術となる可能性があります。
本研究成果は、2025年1月28日にElsevierの国際学術誌『Carbon』に掲載されました。今後、さらなるデバイス性能向上を目指し、産業応用に向けた研究開発を推進していきます。
【小林さんのコメント】
このたび、本研究成果を論文としてまとめることができたこと、大変嬉しく思います。本研究を進めるにあたり、多大なるご支援とご指導を賜りました德田先生をはじめ、牧野様、ネーベル先生、そして共同研究に携わってくださった皆様に心より感謝申し上げます。皆様の専門的な知見とご助力がなければ、本成果は決して実現しなかったと感じております。また、卓越大学院プログラムからも、研究費や奨励金などの支援や、講演会や交流会といった研究能力の基盤を醸成するような場を提供いただき、研究推進を後押ししていただきました。
完全に平坦なMOS界面を持つダイヤモンドMOSFETの実現は、長年の課題であった界面散乱を抑制し、デバイス性能を大きく向上させる一歩となりました。この成果が、ダイヤモンド半導体の実用化へとつながり、技術の発展に貢献できることを心から嬉しく思います。今後も更なる性能向上と応用展開を目指し、研究に精進してまいります。
金沢大学Webサイト ニュース掲載
金沢大学ナノ生命科学研究所Webサイト ニュース掲載

